街中を抜け人気のない森の道に入れば、太陽の最後の残照が、彼女の手を引いて走る彼のシルエットを薄闇の中にくっきりと浮かび上がらせる。
均整の取れた、スラリとした体躯。
小柄な彼女からすれば、見上げる位置にある彼の横顔。
無駄なモノがそぎ落とされたようにシャープな頬の輪郭と、高い鼻梁。
風を受けてなびく、サラサラな金色の頭髪。
その存在の一つ一つが、彼女の心を揺さぶる。
離れたくない。
ずっと、一緒にいたい。
こみ上げる想いが、懸命に動き続けていた彼女の足を止める。
「!?」
驚いたように振り返る彼に全身で息をつきながら、彼女はふるふると頭を振った。
「もう少しだから頑張れ!」
ギュッと握る手に力を込められても、再び否と頭を振った。
――だって。このまま行けば、そこにあるのは『別れ』。なら、それなら、最後までこのまま一緒にいたい――。
「っ……」
言葉にできない想いが涙の雫となって瞳から溢れ出し、止めどなく頬を伝い落ちる。
立ちすくみ、ただ声を殺してしゃくり上げる彼女を、彼は優しく引き寄せると、まるで壊れ物を扱うみたいにすっぽりと包みこんで、彼女の頭にそっとアゴを乗せた。