「おはよー、玲子ちゃん」
かなり引きつり気味に、それでも笑顔を浮かべて返事をし、イソイソと自分の席に座って荷物を整理しはじめる。
「いやぁ、すごかったね、今日の仁王様の雷は。まさか原因が御堂とは、びっくりだけど」
玲子はそう言って、前の席のイスをくるりとこちらに向けて腰を下ろすと、豊かな胸の前で両腕を組んだ。
これは、名探偵よろしく、考えごとをする時の玲子のポーズ。
その顔には、『面白いものを見た』とばかりに楽しげなニヤニヤ笑顔が浮かんでいる。
小説ネタ取材モード決定だ。
――玲子ちゃんは、なんとなく晃ちゃんに冷たい、と思うのは、私の気のせいだろうか?
玲子は日頃から晃一郎のことを、『アレは、ただの女好き!』と公言してはばからない。
まあもともと、どちらかというと、女子よりも男子に厳しいきらいはあるけれど。
それを置いといても、晃一郎の件が、元文芸部の部長で作家志望の玲子の小説ネタ探知アンテナに引っかかるのは分かる気がする。
文武両道な一応優等生の突然の変化。
それもあんなに目立つ変化を、この手の事が三度の飯より大好きな玲子が、見逃すはずがない。
その事象の奥に隠されている真実はなんなのか?
様々なピースを繋ぎ合わせて色々なパターンを想定して、その脳内では多様なストーリー展開が組み立てられているのだろう。
好奇心旺盛を絵に書いたような嬉々とした瞳に見詰められて、優花は、浮かべた笑みが引きつった。
「で、あのヒヨコも真っ青な金色頭の原因はなんなの?」
そんなことを自分に聞かれても、困ってしまう。