「終わったの?」

 顔を上げ、本をサイドテーブルに置く。

 あたしは叶の膝の上に少し横向きで乗った。見上げれば、落とされる優しいキス。
 
「リツ・・・駄目だよ。そんなすぐに男を誘うような目をしたら」

 クスリと笑んだ気配。

「困った子だね。分からないなら、分かるまでお仕置きかな」

 言いながら叶はどこか愉しそうに。
 
「・・・こんな僕は嫌いになる?」

「・・・ううん」

 小さくはにかむ。

「大好き」

「そうやっていつも、僕を篭絡するんだからリツは・・・・・・」 

 薄い微笑みに、少し苦さが雑じって見えたのは気のせい?

「今年のクリスマスはプレゼントも沢山用意したからね・・・。リツが気に入ると良いけど」

 抱き上げられ、ベッドに運ばれながら叶の妖しい声が聴こえた。



 聖なる夜には。
 野獣のような、でも優しい天使がふたり。
 あたしの許に降りて来るに違いない・・・。




【第一部  完】