「いい具合に邪魔しに来るなよ・・・」

「悪いね。これ以上樹のそばに置いておくと、リツが心変わりしそうだから」

 玄関でずっと、あたしの身支度を待っていた叶が樹とそんな会話を交わしているのが聴こえた。

 ・・・とてもバツが悪すぎる。気がする。
 視線が少し泳ぎ気味に、二人の目の前に立った。
 とりあえず、ごめんなさい、だ。
 何ってもう、あたしが元凶なのは間違い無いんだし。

「叶、あの、ご・・・」

 何も言わず。
 叶はあたしを自分の胸に抱き寄せ。
 髪を撫でながら、

「僕の方が禁断症状がひどいかな」

 と、独り言のように囁いた。


 樹のマンションを後にして、叶はハリアーを人けの無い路地に駐車させた。
 まだ未開発区域で、街路灯も少ない闇の中。
 後部シートで絡みあう。
 まるで野獣のような、ふたり。