「・・・当たり前だ。ごっちゃにすんな」

 いつものシニカルな笑み。

「〝結婚〟しようが何だろうが、俺とリツコはこういう関係だってコト、憶えとけ」

 ・・・いつか聴いた科白。

「死ぬまで一蓮托生だ。一生離さないから覚悟しろよ?」

 そんな脅しみたいな科白ですら愉しそうに。
 
「今度首輪でも買って来るか。〝指輪〟の代わりに」


 
 時間も忘れて、抱き合う。

 裸のまま、テレビを見ながら。料理を手伝いながら。外の景色を眺めながら。キスをして。また繋がって。
 
 一日中。

 叶のいない世界は久しぶりだった。
 樹とこんな風に過ごしたのは初めてだった。

 今、叶の顔を見たら。
 あたしは泣くかも知れない。
 地上27階からの夜景を見下ろし、ふと感傷に囚われる。
 背中から優しく抱き締め、樹は見透かしたように少し笑った。

「そろそろ叶が恋しくなったろ」

 そのうち王子サマが迎えに来るんだろうけどな、と樹に抱き上げられベッドに運ばれた。

「叶には一応、ここに居るのは教えた」

「・・・うん」

「それまでは俺のモンだ、・・・全部」


 樹の愛撫に蕩けながらも、頭の片隅に叶がちらつく。
 迎えに来てくれる?
 あたしを連れ戻しに来てくれるの・・・?
 
 
 来訪者を告げるインターフォンが鳴るまで。
 朦朧と、現実との境を彷徨っていた・・・・・・。