やがて着いた場所は湾岸近くの高層マンションエリアだった。
 地下の駐車場にワーゲンを滑り込ませ、乗り込んだエレベーターの行き先は27階。


 離れた眼下に濃紺の海。
 地面から生えたように見える、四角や丸のマンションの群れ。
 ロケーションの凄さと、連れて来られた部屋が一面硝子張りだったことに感動してしまう。
 前面を遮るものもなく、他者の視線を気にする必要も一切ない。一望出来る光景を独占できるのだ。

 30帖近いワンフロアタイプ。
 カウンターキッチン、リビングダイニング、ベッドルームがシェルフや観葉植物で上手に仕切られている。
 リビングはスタイリッシュぽいけれど、ベッドの方はアジアンテイストな雰囲気だったり。

「・・・ねぇ。もしかしてあの別荘って樹の?」

 人形堂の仕事で使う秘密の場所。調度品の揃い方がここと似ている。

「何でそう思う?」

 理由を言えば、樹は感心したように目を細める。
 
「ふーん」

 そのまま抱き上げられ、ソファに降ろされた。

「その話はいいだろ。ほら・・・俺が欲しかったら、ちゃあんとオネダリしな」

「・・・ん・・・っ」



 そこからはもう。ただ熱と波に飲み込まれて。
 樹の中で溺れ続けるだけのあたし・・・・・・。