秋晴れの蒼穹が車窓越しに流れてく。

「今は俺のモンなんだから、ちゃんと俺だけ見てな」

 視線だけ傾けた樹の、いつになく真面目な横顔。

 小さく頷いた後、・・・少し心臓がざわついた。
 ただ躰を重ねる時とは別の。
 まるでレンアイをしているみたいに。
 叶に愛されている時みたいに。
 ゾクリとした。

 ・・・いつの間にこんなに欲張りになったんだろう。
 樹も叶も両方欲しい。・・・なんて。

「リツコ」

 車が停まった。
 目線で問い返すあたしに近付いてくる樹の顔。
 深いキス。

「・・・お前、今すぐ俺に抱かれたいってカオしてる」

「・・・・・・・・・」

 樹に抱かれても〝答え〟が出る訳じゃない。
 そんなことは解っているけれど。
 少し逃げたかった。

「俺をはけ口にするのかよ。・・・大した女だな」

 でも樹はうっすらと笑っていた。

「これも惚れた弱みってヤツかね」