それ以上は言わず、あたしも訊かない。
 さっきの男には売り渡されなかった。・・・らしい、その事実だけで充分だ。
  
 やがて革張りのソファに寝かされた感覚。
 リビングだろうか。

「ちょっと待ってろ」

「ん・・・」

 樹は目隠しを外さずに行った。
 取るな、の意味に捉えてあたしはぼんやりとそのままでいた。

 あの男と。叶の目的は何だったのか。
 依頼者のような口ぶりだったのに、おそらく彼が消した。
 ・・・でもあたしは何も見ていないし、聴いてもいない。
 例えば第三者に問われたとしても、何かの証拠に繋がるものは何ひとつ『知らない』。

 叶は最初から、あたしを〝共犯〟にするつもりがなかった。 
 大きく息をつく。
 
 ただいればいい、の意味も、目隠しも。
 優しさだけど、寂しい。

 そう思うあたしは、浅はかなのか。・・・愛って呼べばいいのか。