揃わない足音が近づくのが分かった。

「今は少し薬が効いていますので、のちほど」

「勿体つけるな」

 顎の下をぐっと掴まれたかと思うと、乱暴に顔を上に向かされる。

「・・・手荒に扱うのはナシにしてもらえませんかね」

 冷ややかに樹が制しても、男は手を離さないどころか嘲笑って言った。

「売りモンじゃねぇなら、レンタル料を払ってやる。金さえ払えば文句はねぇんだろう、人形堂」

「安くはありませんよ」

 答えたのは、叶。
 
「なら今回の報酬に上乗せしとけ!」

「そうさせていただきましょう」

 叶はずっと冷静だった。
 目隠しで表情は見えなくても、声のトーンで判る。
 そして樹は、あたしを抱えたまま離さなかった。