連れて来られたのは、どこかの別荘のようだった。
 車でどれくらいだったろう。 
 途中、車の中で目隠しをされたから時間の感覚も、どこに来たのかも真っ暗で判らない。
 森の中なのか山の中なのか。暗闇に高い樹々のシルエット。
 平屋建てで、和モダン風な造りのこぢんまりした建物が目の前にあった。

「ようこそ、人形堂へ」

 先に着いていたらしい樹があたしを出迎えて、少しわざとらしげに笑いを浮かべた。



 〝人形堂〟
 新しいキーワード。
 でもどこか聴き慣れた・・・。
 ああそうだ。
 叶だ。
 〝僕の人形〟
 時折り、あたしをそう呼ぶから。
 
 にんぎょう。
 ・・・自分の意思では指先ひとつ動かせはしない傀儡(かいらい)。
 見えない吊り糸に括られてるのは、あたし。



 望んでその躯を差し出したのも。