白のチョークで書かれた、読みやすい綺麗な文字列。
 でも直感で男の人の字だと思った。
 字が綺麗なひとは心も綺麗。母がよくそう言ってたから何となくそう思ってしまうのだけど。
 せめて連絡先でも書いてくれれば、電話でだいたいの雰囲気も掴めるのに。
 溜息雑じりに行き過ぎようと。ほぼ同じタイミングで、扉が内側から開いた。

「こんにちわ。今日はいいお天気ですね」

 にこりと微笑んだおじさまが、あんまりにダンディだったもので。
 思わず言ってしまった。

「あの・・・この募集って・・・」



 



『もちろん、あれはタイミングを計ってドアを開けたんだよ』

 叶(かなえ)は、クスクス笑いながら教えてくれたっけ。

『上の窓から君が見えて、良さそうな娘だなぁって思って』

 そしてこうも言った。

『リツと出逢えたのは、神様のプレゼントかな』

 
 さあ・・・?
 運命なんて全部、後付けでしょう。
 現在進行形でいるうちは誰も気付かない。気付けない。
 自分が撰んだつもりで、撰ばれたつもりで。
 

『でも引き寄せたのは僕の実力だけどね』

 ・・・そういうところが、やっぱり叶だ。