「リツ・・・」
 
 耳許で叶の声がする。
 まだ、手も目も戒めはそのままで。
 途中から良く判らなくなっていた。
 同時に違う場所を嬲られて。
 叶のじゃない指があたしに触れ、あたしを責め立てていた。

『歯を立てないで・・・。そう、上手だね』

 叶の声が上でするのに、あたしを押さえ込む別の力に翻弄されてた。

 ・・・もうひとり、誰かいた。
 
 ざわざわする。
 強張る。
 揺れる。

「・・・怯えてるね・・・」

 だから。
 どうして。
 そんなに哀しそうに云うぐらいなら・・・!

 凍り付いたように何も喋れないあたしの頬に指が触れた。

 目隠しだけ解かれ、やっと目だけは今置かれてる状況を認識している。
 ベッドの中央に横たわるあたしの左側に叶、反対側にいたのは。
 ・・・樹。
 志穂さんの、・・・亡くなった奥さんの弟。