「あの人、とても腕の良い職人さんでね。気に入りのお店なんだよ」

 品物を受け取り店を後にした叶は、あたしの手をコートのポケットの中で繋いで来た道を戻る。

「理津子さんに似合いそうなのを見つけたから・・・。後で付けて見せて?」
 
 にっこりと微笑まれあたしは、はにかみながらお礼を言うのが精一杯。
 さっきは少し後ろにいたからはっきりと憶えてないけれど、ペンダントのようにも見えた。

 アクセサリーや時計って、あたしが相手に贈るとしたらそれはやっぱり独占欲のカタチで。
 そんなことで縛れるものじゃないとしても、〝あたしのもの〟だって名札ぐらいは付けておきたいから。
 叶が同じように思ってくれてるかは。・・・手放しで何もかもを信じてしまうには、まだあたしは臆病だった。



 それから叶は、ただでさえクリスマスで賑わう商業施設へと足を向け。

「こういう処は滅多に来ないし、浦島太郎にならないように色々見ておかないとね」

 と、順にショップを回ったのだった。

 彼ぐらいの歳、なんて言ったら失礼だけれど、ウィンドゥショッピング的なものは苦手かと思っていた。
 見ていると店員のあしらい方も上手だし、女性の買い物の付き合い方も心得てる感じだ。

「理津子さんだったら、こっちの色のほうが似合うかな」
「・・・ちょっと試着してごらん」
「思った通りだね」

 気が付いたら、普段は着ていく場所も無さそうな可愛いワンピースと、揃いのコートまで買ってもらっちゃう羽目になってたり。

「叶はあたしを甘やかしすぎ!」

 もう、と困って見せると、「僕の愉しみのひとつなんだから」と余裕の笑みが返った。