どれ着ても可愛いよと、服に迷うあたしを見て叶は笑う。
 別に。初めてのイヴだから気合い入れたいとかじゃなく。
 出掛ける時は特に恰好好すぎる叶の隣で、せめて釣り合う自分でいたいだけ。

 何しろ今日の叶はスーツ姿なのだ。前に古書関連の何かに出席するとかで初めて見た時。・・・言い方はあれだけど、これが自分のものなんだと、どれだけ優越感に浸ったことか。そのくらい似合う。

 背も180近くあって、頭の大きさとか躰つきとかバランスも良いし顔も好いし。
 反対にあたしは歳より幼く見えるほうだし。
 叶に見合うような、大人っぽい服が合わない現実はどうしようも無いから、一番自分が納得できる服を選ぶ。

 格子柄のプリーツスカートに、上は首元ラインにビジューをあしらった、黒のタートルニット。丈が短めのボレロ風ジャケットを羽織って、カジュアル過ぎず、フォーマル過ぎないコーディネイトにしてみた。

「似合うよ。とてもリツらしくて」

 車の助手席に収まったあたしの額にキスをすると、目を細めるようにして叶は微笑んだ。

 二人きりだとリツって呼ぶのは、ちょっと反則・・・。
 嬉しすぎて血圧上がるんじゃないかな、あたし。
 車を発進させた叶の横顔にうっとりと。
 夢見心地の、シンデレラさながらに。