「理津子さん。明日はお店は休みますから、一緒に出掛けましょう」

 叶がそう言ってくれたのは12月23日。クリスマスイヴの前の日のこと。
 多分あたしの顔には思い切り「嬉しいっ!」って書いてあったと思う。
 そんなに喜んで見せると、まるでプレゼントでもねだっているかのように思われそうで、ちょっと恥ずかしくて。
 平静を装って「どこ行くの?」と訊いてみる。

「内緒。それとも僕のエスコートじゃ不安?」

「全然」

 即答。
 今までだって映画に誘われれば、あたしが観たいと話した作品のチケットを予約済みだったし、食事に出掛けても、最初から叶の頭にあるお店を選んでくれていて、パーキングに迷ったりだとかも無い。

 ・・・前カレは案外思いつきで行動するタイプだったから、映画行くにも、適当に行って上映時間が合うのを選んだり、買い物がカラオケになったり。
 まあ若さ故の、それはそれで楽しんではいたけれど。
 叶の場合、何でもそつ無くこなすから。
 完璧主義とか理想主義じゃなく、・・・先回りが出来るひとなんだと思う。
 ちゃんと相手を見て考えて行動するから的を外さない。そういうひとだって思う。

 どんな一日であれ、明日は特別の想い出になる。
 期待とか期待とか期待とか。・・・どうしても色々考えてしまって、眠れなかったらどうしようかと心配したけど全く問題は無かった。
 いつものように叶に啼かされて。
 夢見ることも無く、深い眠りに堕ちていたから。