工務課に戻って事の次第を説明したとたん、美加ちゃんの瞳はまるで少女漫画のヒロインのように、キラキラと歓喜に輝いた。
背後にバラの花をしょっていそうな満面の笑みに、思わずつられて笑ってしまう。
「センパイ、やったじゃないですか。これはチャンスですよ!」
両手でガッツ・ポーズを作って美加ちゃんは興奮気味にそう言うと、それでも周りをはばかったのか、若干声のトーンを落として私に耳打ちしてくる。
「課長と二人で、週末のホテル・パーティ。それも料金も衣装もタクシーも会社持ちなんて、これで楽しんでこなきゃ絶対だめですよっ」
内緒話にしては若干大きすぎる声で、美加ちゃんはウキウキモードで私に念を押す。
『楽しんでこい』と社長と同じことを言うので、苦笑いするしかない。
「あはは……。緊張しすぎて、失敗をやらかさないように祈ってて。じゃあ、今日は先に上がるわね」
手早くデスクの上を片付けて私物の入ったバッグを掴み、着換えをするべくロッカー室に向かおうとした私の腕を、美加ちゃんが『むんず』と掴んだ。
「パーティって七時からですよね?」
「え? ああ、そうだけど?」
「今、五時半だから、急げば間に合いますよね」
「へ?」