課長の歓迎会といい自然公園での鉢合わせといい、週末は何かに呪われている気がする。

 そして、その呪いは、今も続いているに違いない――。

 谷田部課長が既婚者で子供がいると発覚したあの週末から、約一か月後の今日。おりしも花の金曜日。

 工期というものがキッチリと決められている仕事がら、図面を書き上げなければいけない締切り日があって、それに間に合わせようとすれば、定時時間内では到底間に合わない。

 結果、自然と残業が多くなるわけだけど、私的には、そのことは別段気にはならない。

 むしろ、こうして図面台に向かって細かい加工図を書いていくのは無心になれる、とても楽しい作業だ。

 建築模型が大好きな子供だった私には、つくづく、持って来いの天職だと思う。

 でも、大きな問題が一つあった。

 それは、この残業にもれなく『課長』が付いてくる、と言うことだった。

「あの……、谷田部課長?」

「うん?」

 おずおずと、隣の課長席の図面台で『私の担当工事の柱詳細図』を、華麗なるシャーペンさばきで書きこんでいらっしゃる課長様に声をかけると、シャーペンの動きは止まらないまま、声だけで応答があった。