「おはようございます、課長! いいんですよー、私も楽しかったですもん。もっとゆっくりお話ししたかったくらいです」

 私の隣の席から、美加ちゃんの元気な声が飛んでくる。

「真理ちゃん、六歳にしてはしっかりしてますよねー。うちの姪っ子なんて初対面の人に、あんなふうにあいさつなんてできませんよ」

「そうかな? 家は一人っ子だから、あの年ごろの子供は、みんなあんなものなのかと思っていたが……」

「一人っこなんですねぇ。じゃあ、課長、可愛くて仕方がないでしょう?」

 美加ちゃんは私よりもずっと大人だ。

 ちゃんと、臨機応変にコミュニケーションがとれている。それに比べて私と来たら、仕事の準備をするふりをして、会話に加わることができない。

 私はいったい今、どんな顔をしているんだろう?

 ちゃんと、笑っているんだろうか。

「高橋さん。今日のスケジュールなんだが――」

「はい」

 早く。

 一刻も早く、このまま、何事もなく時が過ぎ去ればいい。

 そうすれば、きっと、この心の疼きも薄れていくはず。

 そう、願っていたのに。

 運命の神様というのは、私がとことん嫌いらしかった――。