本当に、美加ちゃんはなんて良い娘なんだろう。
他人のことなのに、まるで自分のことのように親身になって応援して。
私はいつもこの明るさと優しさに元気を貰っている気がする。
「ありがとう、美加ちゃん」
内容はともかく、応援してくれる美加ちゃんの気持ちが、とても嬉しかった。
確かにどう取り繕っても、私は心のどこかで思ってしまっている。
『それでも、あの人が欲しい』って。
それが許されない願いだと知っていても、そう渇望している自分を自覚している。
だけど、私にも『絶対譲れない一線』というものがあった。
私に、不倫はできない。
一般常識や倫理がどうのという問題ではなく、私自身の『家庭』に対する『こだわり』のためだ。
私にとって、家庭は安全で守られるべき神聖な場所。
誰であっても、それが自分自身であっても、絶対侵していい場所ではない。
それが、父親という家庭には必要不可欠な存在を、ある日突然、交通事故で奪われた私の家庭へのこだわり。
そもそも、現実問題。私の気持ちはどうあれ、私は東悟の『元カノ』にしか過ぎず、それも『見事に振られた女』だ。
今の東悟、谷田部課長が私をどう思っているかなんて、それこそ私には知る由もない。
いわば、これは私の長い長い『片思い』。
何だか笑える。
一人で舞い上がって、ドキドキして、落胆して。
最初からあの人は冷静で、私に部下に対する以上の接し方をしなかった。
それが、全ての答えよ。
何も、期待するな、馬鹿な私。