『ようこそ、歩いて行ける世界一周の旅・スモールワールドへ!』
はつらつとした女性のアナウンスと賑やかなBGMが流れる中、ほどほどの人波を縫うように、その場所に一歩足を踏み入れた瞬間、思わず「わぁっ!」と歓声を上げてしまった。
目の前に『東京駅』が建っていた。
もちろん、ミニチュア版だ。
でも、その精巧さと言ったら、さっきの蒸気機関車の比じゃない。
何しろ、そこには、行きかう人間の表情まで詳細に再現されているのだ。
少し疲れたように背を丸める中年サラリーマン。ハイヒールで颯爽と闊歩するOL。テニスラケットを抱えた制服姿の高校生のグループからは、楽しげにおしゃべりをする声が聞こえてきそう。
うわー、うわー、うわーっ!
なにこれっ!?
精巧で緻密なだけじゃない。
この人間観察の鋭さと、そこはかとなく漂うユーモアセンスはただモノじゃない。
もう『よっ、職人芸!』と拍手喝采したくなるほどの見事さで。これを作ったのは、きっと建築物と人間が大好きな人に違いない。
大工という父の職業に影響されたのか、幼い頃からドールハウスや建築物の模型が大好きな子供だった私は、今でもその手の雑誌を愛読している。
つい先日も、母のスネを齧っている分際でと悩んだ末に、世界遺産のミニチュアとセットになっているカルチャー雑誌のシリーズを予約したばかり。
ここでは、その超デラックスバージョンが目の前で見られてしまうのだ。
馬にニンジン猫にカツオブシ、私に建築模型。
ああもう、たまりません。