機関車レストランを出て車で三、四十分ほど走った所で、今までスムーズだった車の流れが微妙に停滞し始めた。

 と思ったら間もなく徐行運転になり、ついには止まってしまった。

 助手席の窓に顔を寄せて、ズラズラと蟻の行列状態で連なる車の列を眺める。

 二車線の道路の両側は緑豊かな自然のままの山林で、人家は見当たらない。

 反対車線の車は滞りなく流れているから、私たちのいる車線に何らかの問題が生じているのだと思う。

 考えられる原因は、道路工事かもしくは『交通事故』くらいだ。

 そこまで考えを巡らせた所で背筋に嫌な汗が流れ落ち、反射的に自分のジーンスの腿の上でギュっと両手を握りしめた。

――交通事故は嫌いだ。

 好きな人はいないだろうけど、私は大っ嫌い。

 その原因は、父の死にある。

 大工だった父は、私が中学二年の時に車の衝突事故で亡くなった。

 つい昨日まで当たり前に目の前に在った家族が、『父親』という存在が突然跡形もなく消え去ってしまった。その時のリアルな恐怖と理不尽さに対する激しい憤りが甦ってきて、未だに背筋を凍らせる。

 当時は車を見ただけで全身に震えが走り、ましてや車に乗るなんて論外だった。

あれから年月を経た今では、さすがに当時ほどの拒絶反応は示さない。