所謂(いわゆる)、バーベキュー形式のレストランだった。

 どっしりとした作りのウッディな四人掛けのテーブルの中央には黒い鉄板が備え付けられていて、そこで肉や野菜を焼いて食べるようになっている。

鉄板で肉や野菜を焼く香ばしい匂いは食欲中枢をもろに刺激して、急に空腹感に襲われた。

 でも足が止まったままの理由は、それだけじゃない。

目の前に展開されている珍妙な光景に、心底驚いたからだ。

 わぁっ、なにこれっ!

 二階まで吹き抜けになっている店の中央部分。そこに何と『ミニチュアの黒い蒸気機関車』が颯爽と走っていた。否、走りまくっていた。

 車両の高さは五十センチ、幅は三十センチほど。細部まで精巧に作りこまれた模型で、先頭車両には『D51』や『C62』などの、アルファペットと数字を組み合わせた金色の文字が印字されている。

この機関車が、駅名が付けられた各テーブルにオーダーされた料理を運んでいる。

 言うなれば、『給仕のメインスタッフは、蒸気機関車!』。

幼い子供連れの家族が、客層のほとんどを占めている理由が良くわかる。これは、子供でなくても楽しい。

 現に私も、さっきまで沈んでいた気持ちが一気に浮上してしまった。

それどころか、故郷の町興し計画でこの実物版が線路を走っているのを思い出して、妙に嬉しくなってしまう。

 もしかして、ここがさっき先輩が言っていた目的地、『私が喜ぶ場所』なのだろうか?

「な、変わってるだろう?」

『驚き桃の木山椒さんしょの木状態』で目の前の光景に見入るばかりの私の反応に満足したように、先輩は二カッと会心の笑みを浮かべた。