一見してペアルックに見える服装で手を繋いで歩く私たちは、傍目には、仲の良いカップルに見えるのだろうか?
大学内で耳にする噂では、『女の子にモテまくりでより取り見取り』だという榊先輩はともかく、人生で初めて異性と手を繋いで心臓が口から飛び出しそうになっている私は、ただ熱く上気している頬を隠すように、うつむき加減で手を引かれていくしかできないのに。
勇気を振り絞って自分から手を繋いでみたけれど、これじゃあ今朝強引にアパートから連れ出された時と、あまり変わらない。
そう、BGMはやっぱり、ドナドナで。
今朝よりは多少曲調は明るくなった気がするけど、根底に流れる何とも言えない『情けなさ』は同質のものだ。
我ながら、今時の大学生にあるまじき状態だとは思う。
でも悲しいかな、これが十八年の人生で培ってきた『高橋梓』という人間なのだから仕方がないと、自分を慰めながら足を進める。
レストランの入り口上部の外壁には『停車駅』と書かれた木製の白い看板がかかっていて、店名に由来するのか電車の駅の看板を模したような作りになっていた。
素焼きレンガ風のタイルが敷き詰められたエントランス部分の『WELCOME!』と染め抜かれたグリーンの玄関マットを踏むと、軽やかに自動ドアが開いた。
その瞬間、圧力すら感じる熱気と香ばしい匂いに全身を叩かれた。
思わず足が止め、二階まで吹き抜けになっている広々とした店内を、呆然と見渡す。