窓の外の景色は、広々とした明るいものから、背の高い立派な針葉樹が立ち並ぶ暗緑色の薄暗いものへ変わった。
だからと言うわけではないけど、急に心細くなった私は、せいいっぱいの勇気をふりしぼって先輩の横顔を見上げて声をかけた。
「あのっ……」
「うん?」
視線は前方に固定したまま、先輩は少し私の方に顔を傾ける。
「あの、どこに、行くんですか?」
「だんだん人気が無くなってきて、変な所に連れて行かれるんじゃないかって、心配になった?」
悪戯っぽく口の端を上げるその横顔に、思いっきりブンブンと頭を振る。
「そ、そうじゃないですけどっ、どこにいくのかなぁって……」
アパートを出てからもうかれこれ三時間近く走り続けていて、確認しただけで三つの県を通り過ぎている。
さすがに一度トイレ休憩にコンビニに寄ったけど、それ以外はノンストップ。
『目的もなくドライブ』と言うのとは、やはり違う気がする。
「たぶん、君なら、喜んでくれると思う場所」
「私が、喜ぶ場所……?」
って、どこなんだ?
観光名所か何かだろうか?
この辺にどんな観光地があるのか、皆目見当がつかないけど。
「その前に」
「はい?」
又、風景が変わった。
高木に遮られていた日差しが戻ってきて、針葉樹林の狭間にぽっかりと空いた広場が現れる。
アスファルト敷きの駐車場だ。
「まずは、目的地に行く前にエネルギー補給ということで――」
「はい?」
「少し早いけど、腹ごしらえしようか」
車を減速させながらそう言うと、先輩はハンドルを左に切り、駐車場の空きスペースに車をすべり込ませた。