「おはよう」

「おはようございますっ!」

 玄関ドアを開けたとたんに、実に爽やかかつ、にこやかな榊先輩の顔を見るやいなや心臓が妙な具合にステップを踏み始め、挨拶の言葉を言うと同時に私は勢いよくペコリと頭を下げた。

「気が合うね」

「はい……?」

 下げた頭越しに落ちてきたのは、笑いを含んだ言葉。

 その意味が掴めずに、目を瞬かせながら視線を上げると、そこにあったのは、何処かで見たような服装をした榊先輩の姿だった。

 淡いブルーのデニム地シャツにブルージーンズ、ご丁寧に足下は白いスニーカーときている。

 うわっ!?

 これじゃ、まるでペア・ルックじゃない!?

「き、着替えてきますっ!」

 こんなこっ恥ずかしい格好で、外なんか歩けない。

 左へ回れ!

 部屋に戻ろうと踵を返して、ドアの取っ手に手を掛けた所で右手首を掴まれ、思わず硬直。

 細身の体に似合わない、思いの外大きくてガッチリしたその手には、さほど力を込めているようには見えない。

 なのに、私はビクリとも動けない。