念入りに洗顔して、化粧水と乳液、化粧下地クリームを塗って、ファンデーションを塗る。

 ここまでの基礎メイクは、いつもやっているから分かる。

 いつもはスティックから直付けしてしまうリップも、リップブラシをつかって丁寧に塗ってみた。

 問題は、この先。

 アイメイクって、どうやれば良いんだろう?

 チークって、どの辺にどのくらい塗るんだった?

 化粧品を買うときに、販売員さんからレクチュアーされた記憶はあるのに、肝心の内容を覚えていない。

 ううっ、やっぱり付け焼き刃じゃうまく行かない。

 でも。習うより慣れろよね?

 ニッコリ。

 鏡の中の自分を励ますように笑顔を作ってから、私は人生初とも言える『バッチリメイク』に挑戦し始めた。

 が、これがうまくいかない。

 塗っては落とし塗っては落としを繰り返し、時間だけが無駄に過ぎていく。

 そして結局、『バッチリメイク』は失敗に終わった。

 何度やり直しても、そこはかとなく漂う『塗りました!』感が気になって仕方がないのだ。

 はっきり言って、似合わない。

 TVタレントや女優さんみたいに、なんて望まないから、せめて普通に見える程度に仕上がれば言うことはないのに、そのレベルにすら手が届かない。

 どうも、私には『メイクセンス』というものが欠如しているんじゃないかと思う。

 この期に及んでどうしようもないので、最初に戻ってファンデーションと口紅だけの芸のないメイクが出来上がった。