小さなコタツテーブルの白い天板の上にどんと置いた、明るい木目柄のメイクボックス。
私の唯一とも言える『お洒落アイテム』を広げて、いざメイク開始! とばかりに、メイクボックスの扉裏の鏡を覗き込んで思わず意気消沈してしまった。
「うわぁ、クマができてる……」
ただでさえ冴えない顔が、輪を掛けて冴えなくなっている。
睡眠不足がすぐ目の下のクマになって出てしまうこの体質を恨まずにいられない。
「……メイク、してみようかな?」
いつもは基礎化粧品で肌を整えるだけで、ほとんどメイクはしない。
さすがに冠婚葬祭などの『お呼ばれ』の時にはファンデーションとリップくらいは付けてはみるけど、華やかなメイクはなんだか自分には似合わない気がして、敬遠してしまう。
だけど、今日は大切な日。
なんて言っても、高橋梓、十八歳にして初デートの日。
ここで頑張らななきゃ、いつ頑張るんだ!
「よしっ!」
バッチリ、メイクを決めてみようじゃないか!
と、張り切ってメイクを開始したのは良いけれど……。
私は、肝心なことを失念していた。
メイクをしたことがない、イコール、メイクの仕方が分からないってことなのだ。