次の土曜日。

 榊先輩とデートの約束をしていた、その日の朝。

 私は、予定よりも三時間も早く目が覚めてしまった。

 というより、うつらうつらした程度でほとんど眠れなかったのだ。

 何を『着ていこうか』に始まり、『手とか繋いじゃうんだろうか』とか、『まさか、最初のデートでキスとかないよね?』とか、果ては『何処かで休んで行こうとか言われたらどうしよう』とか。

 色々と暴走する妄想のせいであまりに興奮しすぎて、目をつぶってもぜんぜん眠気がやって来なかった。

 枕元の目覚まし時計に視線を這わせると、午前三時。

 少しは眠らないと、肝心のデート最中にうつらうつらしかねない。

 そうは思うけど、目をつぶれば浮かぶのは妄想の波状攻撃。

「はあっ……」

 一つ、長ーいため息を吐きだす。

 眠るのを諦めた私はもぞもぞとベッドを抜け出して、早すぎる朝食の準備を始めた。

 我が城は、学生用に建てられた八畳一間のワンルーム。

 四階建てのアパートの外観は大分年季が入っているけど、中身はみんな今風に綺麗にリフォームされている。

 明るい木目調のフローリングに白いクロス張りの壁。

 小さいながらもオシャレな出窓が付いていて、ミニ観葉植物の寄せ植えなんかを飾っている。

 ソファーベッドの足下には食卓兼勉強机兼憩いの場所でもある、小さな白いコタツテーブル。

 そのテーブルでトーストとカフェオレで軽い朝食を済ませた私は、早速イソイソと『お出かけ』の準備に取りかかった。