「な、なんか、変なこと言ってないよね?」
夢の内容を思い出して良からぬことを口走っていないか、変な汗が、っと噴き出す。
「さあ、どうでしょう?」
うふふふと、邪気の欠片も感じられないさわやかな笑顔で、小悪魔は小首を傾げる。
小柄で童顔、やたらと姿勢が良くて、髪型はショートカット。
実年齢は、一人娘の私が二十八歳になるんだから、推して知るべし。
――なんだけど、正直に実年齢を言っても、まず誰も信じないだろう。
みんな、この見てくれと『ホワン』とした邪気のない笑顔に、騙されてしまう。
でも、あなどってはイケナイ。
この人は、冷酷ではないけれど、けっして甘くもない。
物事の道理や正義を重んじる、どちらかと言えば厳しい教師で、たぶん、それ以上に厳しい母親なのだ。
こと、人に危害を及ばしたり迷惑をかける行為に関しては、『まあ、このくらいは良いか』とか、『仕方ないわね』とかいう、生ぬるい対応はしてくれない。
人間として譲れないことに関しては、相手が他人様の子供だろうと自分の娘だろうと、ダメなものはダメと情け容赦なく厳然と言い渡す。
それに、自分がこうと決めたら絶対引かない、頑固な人。
私の頑ななところは、きっと、この母親譲りだと思う。
どうせなら愛嬌のある見てくれや、強くしなやかで竹を割ったようなあっぱれな性格も、ちょっとは分けてもらいたかった。