「っ……まぶしっ」

 刺さるように降り注ぐまばゆい光に、思わず目を細める。

 それは、電灯の明かりではなく、自然光。

 開けられたカーテンの向こう側の日差しは、カンカン照りで、かなり暑そうだ。

 まだはっきりしない思考でぼんやりと壁掛け時計に視線を移せば、既に時計の針は10時を少し回った所だった。

 一瞬、『あ! 会社、遅刻!』と口から飛び出しそうになった声を、どうにか飲み込む。

――そうだった。

 今日は休んでいいって、課長に言われてたんだっけ。

 本当は出社するつもりだったけど、結局は、起きられなかったなぁ。
 
 ううっ。

 気持ちは、学生の頃と少しも変わらないのに。

 寄る年波には勝てないねって、こういう時をいうんだろうか。

 いやいや、まだ二十代だろう、私。

 自分の年寄りくさい感慨にツッコミを入れつつ、名残り惜しいベットから、ノロノロと体を起こす。

――しっかし、なんちゅう夢ですか?

 見事に昨夜の体験がメルヘンチックに、神アレンジされてたなぁ。

 夢の中までヤなやつな蛇親父は置いといて、等身大のキジ猫さんはちょっと可愛いかったかも。

 どうせなら抱き着いておもいっきりモフモフしてみたかった。

 そういえば課長、なんだか、後光がさしてたなぁ。

「まだ、寝ぼけてるの? それにしても、泣いたり笑ったり忙しい寝言だったわね」

「えっ!?」

 目の前にぬっと現れた母の顔を見つめて、頬の筋肉がヒクヒクと盛大にひきつる。

 寝言って、どの辺から、聞いてたのお母さん?