パタン――と、ドアの閉まる音がどこかもの悲しく響く。

 まるで、初めからここには居なかったかのように、何の痕跡も残さずに消えてしまった人。

 胸が、痛い。

 おいてけぼりにされた、あの頃の気持ちが蘇ってきて、胸の奥が痛い。

 ふと、あの人はなぜソファーで寝ていたんだろう? と思った。

 もちろん、何かあって欲しかったわけじゃない。

 もしも、実際に何かあったら、『酔っぱらって正体を無くした女に手を出すような最低野郎』だと、私はあの人を軽蔑するだろう、だけど。

 自分でも、矛盾していると思うけど、何だか女としての自分を否定されたような気がして、少しばかり淋しい。

 本当、矛盾している。

『センパイ? どうかしたんですか?』

 訝しげな美加ちゃんの声に現実に引き戻された私は、ブルブルと頭を振った。

 考えても仕方がないことは考えない。

 それが、女歴二十八年で学んだ処世術。

「ううん、なんでもないの……。それより、何か用事でもあったの?」

 確かに美加ちゃんとは電話で連絡しあう仲だけど、休日にプライベートでかかってくることは滅多にない。何かしら会社関連の連絡事項があるのだろう。

 でもその予想は、意外な方に外れた。