って言ってもねぇ。
新任の課長に会ったからって、感動する要素ないと思うんですけど、私。
男性教師に興味津々の、ウブな女子中学生じゃあるまいし。悲しいかな。女も二十八歳にもなれば、少々の事で、ハートはときめかなくなるものなのよ。
「なに、いい男だったわけ?」
苦笑しつつ、美加ちゃんが聞いて欲しいだろう質問を返す。
案の定。美加ちゃんは『うふふふ』とニヤケた表情で、なぜか化粧ポーチからピンクのスマートフォンを取り出し、『シュタッ!』っと私に差し出した。
チラリ。
視線を走らせると、その表示窓にはスマホのカメラで撮った写真が写っている。
「何? 写真まで撮ったの?」
今日から飽きるほど見られるでしょうに。ご苦労様ね。
「見て下さい~、久々のヒットですよ!」
「どれどれ」
私は、落ちかけた黒縁メガネの鼻のフレームを人差し指でずり上げて、苦笑しながら美加ちゃんのスマホの画面を覗き込んだ。
――え?
瞬間、息が止まった。ドキンと、鼓動が跳ねる。
スマホのカメラの小さな画像。
映っているのは見覚えがある、――ありすぎる、痩せぎすの男の横顔。
年は、二十代後半から三十代前半。
彫りの深い顔立ち。
少し鋭さを感じさせる切れ長の目は、綺麗な二重。
すっと通った鼻筋、引き締まった口元。
そんな……まさか。