まだ眠りきらない真夜中の街を縫って、車は家路へとひた走る。
車を走らせている間も、私たちはマニアックな話題で盛り上がった。
「子供の頃、薄暗い工場の中で上がる溶接の火花の色が、好きだったんだ。あれって、下手な花火より綺麗だと思わないか?」
「あ、分かります、それ!」
思わず、答える声に力がこもる。
この仕事に就いてから初めて工場に行ったとき目にした、溶接の際に放たれる、独特の火花。
浮かび上がる、陰影。
幻想的ですらある、あの一瞬。
とても綺麗だと、美しいと思った。
「青白いっていうか、青紫っていうか、群青?」
あの、素晴らしく綺麗な、青のグランデ―ションを表す言葉が見つからない。
――ああ、表現力の乏しさが悔しい。
「独特な色合いですよね、私も好きです、溶接の火花」
「だろ?」
「はい!」
「しっかし……」
前方に視線を固定したまま、運転手の課長は愉快気に笑う。
「はい?」
「いや、こういう話題で盛り上がれるカップルも、珍しいんじゃないかと思ってな」
「……そ、そうですね。かなりマニアックですよね。あははは」
――カ、カップル言いましたか、今?
さらりと放たれた言葉に、ドキドキと早まる鼓動。
深い意味などないと分かっているけど、私の心臓はいちいち律儀に反応をする。
内心の動揺を悟られまいと、思いつくまま話題をふった。