ま、まさか、谷田部課長からじゃない……よね?
そんな考えが頭を過ぎったけど、そもそも私のスマホの電話番号を彼が知っているはずはない。
そう思い直して鳴り続けるスマホのありかを探し、重い体を引きずるようにベッドから降りた。
たぶん、ハンドバックの中だと思うけど、寝室には見あたらない。
私の部屋は、六畳間の寝室と八畳のDKの二間しかないから、残るは隣のDKのみ。
ガラリと、DKへ続く木製の引き戸を開けて一歩足を踏み入れた私は、目の前の光景に『ピキッ』と全身見事に固まった。
え……、ええっ?
なに、なんなの、これは!?
ごくり。
あまりにも予想外な目の前の光景に、私はその場に固まったまま、大きな音を立てて唾を飲み下した。
――もしかしたら私はまだ眠っていて、これは夢なのかしれない。
じゃないと、こんな状況、理解不能だ。
私愛用の淡いイエローの二人用ローソファー。
その上で、ビビット・オレンジの花柄クッションを抱え込んで、誰かが窮屈そうに眠っている。
ソファーからはみ出した長い手足は、大柄な男性のものだ。
って、この状況で、ここで眠っている人間なんて一人しか居るはずがない。
夢じゃない、 夢じゃない!
全部、丸ごと、現実だあっ!!
「や、や、谷田部課長ーーーーーっ!?」
あまりの衝撃に、口から滑り出した言葉はワントーン跳ね上がり裏返った。