はーっと長いため息を吐き、眉間に浅くシワを刻んだ課長は、淡々と言葉を続ける。
「さっき、医者の言うことを聞いてなかったのか? 『念のため、明日一日は家で安静にしていること』って、言われただろうが」
「そう、ですけど……」
――課長の口調が、今までと違う。
今までのように部下に対する一線を隔したものではなく、なんだか昔の東悟と居るような、そんな砕けた口調に鼓動が変なふうに乱れ打つ。
「車を運転してなんてのは、もってのほかだ。今日はこのまま家まで送り届けるからな」
『ん?』と、近距離で顔を覗き込まれて、思わずのけ反り足がとまる。
――か、顔が近いっ。近いってば、課長!
「わかりました、わかりましたからっ」
「んじゃ、そういうことで、レッツ・ゴー」
「はい……」
ポン、と肩を軽く叩いて促され、再び二人並んで歩き出す。
――やっぱり、そうだ。
明らかに、口調が変わった。
傷心の元カノを労わっての、期間限定?
それとも、これからずっと?
って、まさかね。
たぶん、今日だけの特別サービスだ。