瞬間冷凍されたサンマみたいに固まる私を見やり、課長は愉快そうにクスリと笑う。

 そのまま、歩き出した課長につられて私も足を踏み出す。

「外食が無理なら、何かテイクアウトできる料理を買って帰ればいいか。適当な店があったかな」

「……あ」

 課長の言った『帰る』の言葉で、思い出した。

「どうした?」

「私、会社に車、置きっぱなし……」

「なんだ、そんなことか。別に、置きっぱなしでも構わないだろう?」

「……」

 というか、戻ること前提だったんでデスクの上は資料の山だし、図面台には製図途中の加工図面が張り付けたまんまなんですが。

 ちらりと薄明りの中で腕時計を確認すれば、あと少しで日付が変わろうという時間だ。

――美加ちゃん、さすがに帰ったよね?

 すぐに戻るって言ってきたから、きっと心配かけちゃったな。

 車も取りに行きたいし、デスクの上もあのままにしてはおけない。

 どちらにしろ、一度会社に戻らなきゃ。

「あの、課長……」

「会社に戻るのは、却下」

 おずおずと口を開けば、私の考えなんかお見通しというように、課長の応えはにべもない。

「でも、デスクの上も散らかしっぱなしで、図面も書きかけてそのままなんです。それに、会社まで送っていただけたら、後は自分で運転して家まで帰れますし……」

「……あのな」