「ああっ……」

 やってしまった。

 お酒を飲んで正体をなくすなんて、こんなこと初めてだ。

 それも、よりによって、谷田部課長の歓迎会の席でやらかすなんて、最悪すぎる――。

 頭を抱えて、肺が空っぽになるくらいの、今までで最大級・特大のため息を思いっきり吐き出す。

 でも、それで自分がやらかしたことが帳消しになるはずもなく、私はベッドの上で、ズキズキするこめかみとムカツク胃袋をギュッと抱え込み、反省モードに突入した。

 どん底まで沈みきった心は更に穴を掘って、奈落の底に落ちていく。

 ――しばらく、酒は飲むまい。

 少なくとも、谷田部課長の前では、金輪際飲むまい。

 そう、固く心に誓う。

 ああ、それにしても。

 私ってつくづく、進歩がない。

 大人の女ぶりっこしてみたところで、中身は十八、九の女の子のまま、何の変わり映えもしていないじゃないの。

「ああ、もうっ……」

 月曜日にどんな顔をして谷田部課長に会えば良いんだろう? と途方に暮れる頭の片隅で、私は別のことを考えていた。

 少しは、怒ってくれるんだろうか、あの人は?

 それとも、やっぱり大人然とした態度で、笑って見せるんだろうか?

 たぶん、きっと。何事もなかったみたいに笑う……ような気がする。

 二日酔いのせいばかりじゃなく、なんだか、無性にムカツク。

 自分の所業を棚に上げてむかっ腹を立てていると、何処かでスマホの着信音がなった。