い、い、いや、待てよ。
これは、またもや、からかいモードに突入か?
そうだ、そうに違いない。
そう自分に言い聞かせ、チラリと爆弾発言を投下した張本人を伺い見れば、冗談とも本気とも受け取れる表情を浮かべている。
それは、なんとなく楽しげな表情だ。
「あ、そうそう。歓迎会の夜、あれはかなりヤバかった――」
前言訂正。
どう見ても、楽しげな表情だ。
「思わず、このまま襲っちゃおうかと思うくらい、ヤバかったな。って、本当は途中まで襲いかけたの、気付いてないだろう?」
「なっ!?」
なにーーーーーっ!?
「ほんっと、昔っから、無自覚に誘ってくれるから、このお嬢さんは」
「失礼ねっ! 私が、いつ誘ったっていうの!?」
驚きすぎたせいで失調気味の言語中枢は、上司に対する敬語の成分を綺麗に吹き飛ばした。
なんとか反撃を試みようと口を開け閉めするけど、上手い言葉なんか出てこない。
そんな私を愉快気に見やり、敵は、更なる爆弾発言を投下する。
「その1。部屋に送り届けてヤバい雰囲気になりそうだからすぐに帰ろうとしたら、酔っ払って意識ないくせに、人の前髪をグシャグシャかき回して、ニコニコ笑いかけた」
――げっ。
『ふふん』と、勝ち誇ったような表情を浮かべて、指折り数え始めた東悟の爆弾発言は次々と投下される。
「その2。窮屈そうだからスーツの上着だけ脱がせてベットに寝かせたら、意識ないくせに『シワになるからいやっ!』とか言って、人の前で全部脱ぎだした」
――うげげっ。
「その3。『又あえて嬉しい、東悟が悲しいと私も悲しいから、笑って』なんて可愛いことを言うから、思わず襲いかけた、……ってか、キスしちゃいました、マル」