――わ、分からない。
課長の真意が、分からない。
なんで、こんな状況に陥っているのかも、まったくもって分からない。
でも、いつまでもこうして両手を握り合って至近距離で顔を突き合わせているなんて、私の羞恥心が耐えられない。
ええい。
額で熱を測るくらい、なんだっていうんだ。
このまま恥ずかしさでじりじりと照り焼き状態でいるより、潔く一瞬でこんがりと焼き上がった方が、よっぽどマシだ。
――行け、梓!
究極の選択をした私は、ギュッと目をつぶって、額を突き出した。
が、次の瞬間、『ごちん』という実にひょうきんな音が上がった。
それと同時に額に走る鈍痛に、思わずうめく。
「……ったい」
目測を誤った。
気合と勢いの相乗効果で、私の額は、課長の額と見事に激突してしまった。地味に痛い。
「すみま……」
無言で肩を震わせている課長にあやまろうと頭を下げようとしたら、またもや『ごちん』と額がぶつかってしまった。
「す、すみませぇん……」
熱を測るどころじゃない。これじゃ、頭突き攻撃だ。
痛みで涙目になりながら、くっついた額を離すために前かがみなっている体を起こそうとしたけど、なぜかピクリとも動かない。
いつのまにか握られていた両手は放され、握っていた課長の両手は、私の頭を抱えるように両頬に当てられている。
結果、私は課長に頭突き攻撃を食らわせた状態のまま、動けない。