「本当、楽しい人ですねあなたは。東悟くんが惹かれたのが、分かる気がします」

 かわるがわる私と課長に愉快気な、それでいて優しげな眼差しを向ける風間さんに、課長は、一際眉間のシワを深くして唸った。

「かぁーざぁーまぁぁーっ!」

「まあ、そういうことで、お邪魔虫は退散します。せっかくの機会ですから、二人で心行くまでゆっくり語らってくださいな」

 パチリと、丸メガネの奥のつぶらな瞳から、きれいなウインクを一つ繰り出して。

「それでは、また」

 バイバイと手を振って、風間さんは病室から出て行った。

 遠ざかる、のんびりとした足音。

 賑やかな気配が消えて、シンと静まり返る深夜の病室に残されたのは、毒気を抜かれた課長と私。

 どちらからともなく視線を合わせれば、自然と、笑みがこぼれた。

――助けてくれて、本当にありがとう、探偵さん。

 それに、素敵なアドバイスも。

『君は君自身の言葉で、説明する責任がある』

 あれはたぶん、課長に対してだけ向けられた言葉ではない気がする。

『君は、君自身の言葉で、説明を求めていいんだよ』

『勇気を出して聞いてごらん』

 私に、そう言ってくれたんじゃないだろうか。

 なんて、勝手な思い込みかもしれないけど。