――うっ、怖い。

 怒られて当然だけど、怖いものは怖い。

 もともと目元が鋭い作りだから、素で睨まれるとかなり迫力がある。

 そういえば、第一印象、『この人、絶対怖い人』だったものなぁ。

「す、すみませんっ」

「あーあ。そんなに苛めたらダメでしょうが。君のために一生懸命頑張ってくれたのに、もう少し、愛想の良い顔ができないんですか、東悟くん?」

 突き刺さる強い視線から逃れるように再び頭を下げたところに、あらぬ方から笑いを含んだ声が飛んできて、私は眉根を寄せた。

「……は?」

……はい?

 聞き覚えのある声と独特な話し方。

 それは、つい先刻、窮地(きゅうち)を救ってくれた恩人のものだ。

風間(かざま)さん!?」

 病室の中に第三者が居るとは思わなかった私は、思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 驚いて視線を彷徨(さまよ)わせれば、出入り口のドア近くの壁に背を預けて佇む、細身の男性の姿があった。

「はい、風間(かざま)太郎(たろう)です」

 微塵も気配を感じさせずにいた麒麟(きりん)探偵は、軽く右手を上げると、ニッコリと満面の笑顔を浮かべた。