完全に墓穴を掘った。これでは、向うずねを蹴飛ばすこともできやしない。でもその代わり、利き手の右腕がフリーになった。

 チャンス、到来。

 すかさず、へばりついていた体を押し退け、引きはがしにかかる。

「くっ……うっ」

 じたばた必死にもがくけれど、小憎らしいことに、びくともしやしない。

「では、希望を聞こうか。時間が惜しいからソファーの上? それとも、広々ベットの上? どちらがいい?」

――なんだ、その二択は?

 この、セクハラ親父っ!

 気力を奮い立たせて睨み上げ、声を発する。

「……今すぐ、ここに、降ろして下さい」

「ほう、床か……。そういうのが、好みかね?」

 好みなわけあるかっ!

「降ろしてくれないなら、大声出しますよ?」

「遠慮しないで、出してみるといい」

「ひゃっ!?」

 言いざま、ソファーの上に放り投げるように降ろされ、そのまま押し倒される。

 抵抗する隙も与えられず、身体全体で、がっしりと抑え込まれてしまった。

「あっ!?」

 っと言う間にメガネを外されて、ど近眼の私は視界がぼやける。

 これでは、反撃するにも逃げるにも不利だ。

――ひっ、卑怯者っ!

 メガネまで取ることないじゃないっ!