尚も収まらない怒りのエネルギーを、どうにか体内に封じ込めながら、私は考えていた。
――この人は、いったい何がしたいのだろう? と。
聞きたくないと言った、あの人の過去をすべて暴露して、まるで、あの人に同情しているような口ぶりで。
でも、その実はけっして同情などしていないと分かってしまう、私に向けられる鋭利で冷ややかな眼光。
なんにせよ、ここまで聞いてしまえば、この先を問わないわけにはいかない。
一つ大きく息を吐き、まっすぐ彼を見据えたまま、私は彼に問うた。
「それであなたは、私に、どうしろというんですか?」
「君がしたいように」
――私が、したいように?
「どういう、意味でしょう?」
「君は、あいつを、東悟を好いているのだろう? 九年前と変わらず、女としてね。あいつにしても、同じだろう。だから、相思相愛の者どうし、ヨリを戻してはどうかと言っているんだ」
――そんなこと、大きなお世話だ。
あなたに、何の関係があるの?
そう、言ってやりたいけど、喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。
今は、この人の魂胆を知る方が先決だ。
どんな言葉をぶつけたら、あの鉄面皮から、本音が聞きだせるだろう。
素早く考えを巡らせ、静かに口を開く。
「課長には、婚約者候補がいるのに――ヨリを戻せと?」