――望むところだ、なんでも来い!

 きっちり答えてやろうと身構える私に次に向けられたのは、かなり意地の悪い質問だった。

「君は、九年前、東悟の身に何が起こったか、奴から聞かされているのかい?」

「……」

 思わず、答えに詰まった。

 膝の上に乗せた両の手のひらを、ぎゅっと握りしめる。

 正直に答えるなら、私は課長から過去に何があったのかは『聞かされていない』。

 ただ、『あの時は、すまなかった』と、詫びの言葉を言われただけだ。

 でも、それを口にするのは、ためらわれた。

 自分が何も知らないこと。それを知られることが嫌だったからじゃない。

 知らないと答えることで、この人が次に何を言うかが予想できてしまったから、ためらったのだ。

「簡単な質問だと思うが、答えられないのか? それとも、答えたくないのかな?」

 ここでダンマリを決め込んでも、話は進まない。

 結果、私は、ここから帰れない。

 気は進まないが、答えるしかない。

「……聞かされていませんが、そのことが何かこの後のお話しに関係ありますか?」

「おおいにあるから、聞いているのだが?」

 こうもきっぱり肯定されては、さすがに反論できない。