全部忘れて、飲んじゃおう! と、調子に乗ったのがいけなかった。

 久々の、ビール・日本酒・ウイスキーのチャンポンは、浮かれた脳細胞にやたらと効いて効いて、効きまくり――。

 歓迎会がお開きになるころには、私は、ここ最近になく『酔っぱらって』しまっていた。

 それも、あまり良い酔い方じゃない。

 はっきり言って悪酔いだ。

「……うえっぷ。きぼじばるい……」

 うわぁ、トイレの床と天井が、グルグル回ってる。

 いくら何でも飲みすぎだわ、こりゃあ。腰が立たないぞ。

「はぁっ……」

 洗面台の前で床にしゃがみ込んだまま立てなくなってしまった私は、酔いの回った頭でひとり、反省モードに突入していた。

 いくら隣に課長がいてテンパっているからって、何、やってるんだか。

 ああ、私って……。

「相変わらず、要領の悪いヤツ」

 背後から聞こえてきた声に、アルコールで既にフル回転状態だった鼓動が大きく跳ねまわり、ただでさえズキンズキンしているこめかみに、更に負荷をかけていく。

 ああ、うるさい。

 もう、いい加減に慣れても良いのに、この心臓め。

 低い声音には、あの頃と同じ響きがあった。

 からかいと。

 そして、そこに垣間見える優しさ。

 なんで、こんな所に顔を出す?

 下腹にぐっと力を込めて、私は、何とか立ち上がった。