「あの、私に、お話しがあるとのことでしたが……」
これは早々に用件をすませて、会社に送り届けてもらおう。
そう思って、思い切って話しをきりだしたのに。
「それは、食事の後にでも、ゆっくりとお話ししますよ」
……はい?
にっこりと、抗いがたい満面の笑顔で言い渡されて、浮かべた笑顔がヒクリと引きつった。
この人と、食事!?
二人っきりで!?
想像しただけでも胃が痛い。ぜったい、消化不良を起こしそうだ。
「あの、すみません。すぐに戻ると会社の者に言ってきているので、お食事は……」
「まだなんでしょう?」
『ご遠慮させて下さい』と、きっぱり断ったら気を悪くするだろうか?
なんて言い淀んでいたら、すかさず先制攻撃をかけられてしまった。
「あ……はい。まだですけど」
シュンとうなだれながら、反射的に返事をしてしまってからしまったと気付く。
――あああっ。
『もうすませました』って、言えばよかったじゃない!
なんで私って、とっさの判断が遅いんだろう。我ながら、要領悪すぎる。