そう。
私の方こそ、歓迎会の日から始まって、色々と谷田部課長には迷惑のかけどうしだ。
きっと、なんてはた迷惑なやつだと思われているに違いない。
「残業ね……」
従兄さんの端正な口元が、意味ありげな笑みを刻む。
それは、純粋な笑みというよりは、皮肉めいた色合いが濃い。
それに、口元は微笑んでいるのに、なぜか銀縁メガネの奥の瞳は笑っていないような気がする。
「仕方のない奴だ。上司が働きすぎると、部下が休めなくなってしまうのに。上に立つものは、怠け者に見えるくらいがちょうど良いとは思わない?」
これは、一般論?
それとも、経験に基づくもの?
この人も部下を使う立場の人間、ということだろうか。
確かに、どう見ても平社員には見えないけど。
「……そういうものですか?」
「そういうものだよ。まあでも、君みたいな可愛らしい部下となら、残業したくなるのもわかるかな」
「あ、あははは……」
さらりと、『可愛らしい』なんて言われて、どう返答していいのか困ってしまう。
仮にも、二十八歳にもなるいい年の大人の女なんですけど、私。
――ううっ。
やっぱり、この人のこと、苦手だ。