「私に関わり……、ですか?」
「はい。あなたに、です」
おそるおそる確認をすれば、潔いくらいにきっぱりとした答えが返ってきた。
ちらりと脳裏をかすめたのは、課長の部屋で見せられたあの『盗撮写真』の数々。
あれが関係しているのかもしれない、と思った。
もしかして、あれが原因で婚約者候補嬢ともめてる――とか?
あり得る。
いくらねつ造度99パーセントの盗撮写真でも、全部が事実無根なわけじゃない。
たとえ1パーセントだとしても、そこには、紛れもなく事実が写しだされている。
前後関係がどうでも実際はどうでも、それだけは否定しようがない。
あんな写真を見せられたら、婚約者になる予定の女性|《ひと》なら、ブチ切れて当然だろう。
――うわーっ。
これは、『こんなことをされては困る』とか、『結婚の邪魔をしないでほしい』とか、『身を引いてほしい』とか、身内から釘を刺されまくるパターンですか?
嫌な汗が、たらーりたらりと滴り落ちる。
――まあ、誤解ではあるんだから、その辺は胸を張って弁解できるけど……。
気が進まないなぁ。
できるなら、そんな修羅場もどきに足を踏み入れたくはない。でも一応、当事者としては、説明をする責任はあるか。
誤解をさせてしまったことをお詫びして、早々に引き上げて。また会社に戻って残業の続きをすれば、大丈夫よね。
そう思い、尻込みする気持ちを奮い立たせ、私は課長の従兄さんと会うことにした。