仮にも、県内最大級の規模を誇る高級ホテルの、監視カメラの映像。
それが外部に漏れ悪用されることにでもなったら、ホテルとしては大きな信用問題だ。
安易に、漏洩するような真似はしないはず。
手に入れるには、何が必要?
お金? それとも――。
『金を積まれれば、違法スレスレの、というか立派に犯罪モノのことを平気でやってのける輩ですよ』。
穏やかな口調で語られた、探偵さんの物騒極まりない言葉が頭の中でぐるぐると渦をまく。
普段の生活からは考えられないような、非日常の凶事。
立ち入ってはいけない場所に、片足を突っ込んでしまったような恐怖感が、足元からじわじわとせりあがってくる。
ゾクリ、と、背筋に、悪寒が走った。
「やっぱり、怖がらせてしまったみたいだな……」
溜息とともに落とされた呟きにハッとして、私は、隣に座る課長の顔を見上げた。
申し訳なさそうに向けられる課長の瞳に、『見せなければよかった』という、後悔の念が見えるような気がした。
「平気です。ぜんぜん平気です!」
確かに怖いけど、課長がこの写真を隠さないで見せてくれたことは、素直に嬉しい。