そして、一瞬の空白の後、

――え……?

 その写真が『何』を捉えたものなのかを理解した、その刹那、

――え、えええええっーーーー!?

 声を発することもできずに、私は、ものの見事に全身金縛り状態に陥った。

 ぎゅっと握りしめた写真の両端が、負荷に耐え切れずに、ぐしゃりと歪む。

 だけど、そんなことなんか気にしていられない。

 なにこれ、なにこれ、なにこれぇーーーーっ!?

 驚きのあまりフリーズ状態の脳細胞は、意味のない言葉を連呼する。

 それは、パーティの二次会がお開きになった後の帰り際、エレベーターの室内を写したものだった。

 エレベーターに乗っているのは、一組のカップル。

 どう見ても、カップルにしか見えない。

 なぜなら、その男女はロマンス映画さながらの濃厚なキスシーンを繰り広げていたからだ。

 まだ消えきらない街の灯を階下に見下ろし、降りていくエレベーターの室内で重なり合う二つの影。

 それは、紛れもなく私と課長の姿だ。

 あの時の私は、飯島さんの告白に対して、課長が感情を排したような静かな声で放った言葉。

『部下のプライベートなことまでは、関知しませんので』という一言に、かなりのダメージを受けていて、降りていくエレベーターの室内で、とうとうこらえ切れずに涙があふれてしまった。

 悟られまいと必死に外の景色を見ているふうを装ったけど無駄な抵抗で。

 課長の長くて繊細な指先に濡れた頬を優しく拭われ力強い腕に引き寄せられて、抗うすべもなくその懐に抱きこまれてしまった。